AOUR - 考案経過1

SKY配列とAZIK

キーボードの入力配列に詳しい人なら当然知っているのだろうが、SKY配列という日本語入力方式がある。ローマ字入力的でありながら、効率的な打鍵ができ、覚えやすい配列であるとされる。

この配列の存在を知ったのは、木村泉氏著「ワープロ徹底操縦法」を読んだときなので、もう10年以上前になるだろう。ローマ字入力、JISかな入力との比較では、実験した学生がもっとも最短距離で習得できたという。
当時は、その配列に触れる機会もなく、それ以上の興味が湧かなかったのであるが、今にして考えれば、これは実に画期的な配列だ。

詳細についてはリンク先などを参照いただければおわかりかと思うが、右手に母音と二重母音、撥音拡張を集め、左手には、ほぼ五十音図の順の規則に近い形で子音が配置されている。基本的には、母音の五つと、それぞれの子音の位置さえマスターしてしまえば、多分ローマ字入力的に最低限の日本語入力ができるようになる。さらに、二重母音拡張と撥音拡張を追加して覚えると、ひととおりマスターできることになる。
母音が一方の手に集中しているDvorak配列のようであることで、左右の手指交互打鍵の確率が各なり、それで入力がしやすくなるのと、日本語の音韻に出現頻度の高い二重母音や撥音の専用キーを用意することで、入力が効率的に行えるようになる。

自分は今、AZIKの配列でローマ字入力を拡張している。覚えた頃は全く考えもしなかったが、ある時思い出してみれば、これはSKY配列の思想に非常によく似ている。実際、調べるとAZIKの考案者の木村清氏は、SKY配列を参考にしたと述べている。
SKY配列は、全く独自の発想で、QWERTY配列とは無関係な全く新たなキー配列であるが、AZIKはQWERTYを元にして、それを拡張している。
SKY配列では母音が右手に集中している為に、二重母音や撥音拡張も右手の母音の同じ列に揃えられているのが覚えやすいと思う。

AZIKは、現行のローマ字入力の拡張である為に多少拡張キーが散在してしまうのだが、AZIKの最大の特徴は、既に周到(←習得の間違いですw)しているローマ字入力の資産を最大限に生かして入力の効率化を図るということなので、それについては納得できる。

つまり、全く新たに覚えるのに覚えやすいとされるSKY配列を現行ローマ字を習得した状態で覚えやすい方式として考案されたのがAZIKであるとも言えるので、つまり、既にローマ字入力を習得している人が最短距離で入力効率の向上を行える可能性が高いのが、AZIKなのである。

(2007/1/8)

ATOKで自分用新ローマ字配列作成を思案

まだこれを書いている時点ではできるかどうか全く不明だが、ATOKで実装することを前提に、自分用の新ローマ字配列定義ファイルを作成してみたいと考えた。
SKY 配列、Dvorak配列と見てゆくうちに、QWERTYローマ字より、これらの配列のほうが少し効率がよいかもしれないなと思った。Dvorak配列は、ソフトウエアで仮に実装してみたところ、やはりQWERTY配列をゼロから覚えるよりも確実に覚えやすい気がした。母音が左手に集中しているから、ローマ字入力でテストをしながらだとまず母音の位置と、よく使う段の子音を覚え、あと、ローマ字で通常は使わない子音キーの位置を覚えるだけである。無論、覚えるのは簡単でも、高速に入力できるようになるまでにはまだ先のステップがあるわけだが……。

さてそこで、AZIKのDvorak配列版であるACTがどうにかしてATOKで使えるようにならないかと考えたり調べたりしてみたが、やはりローマ字カスタマイズの制限の関係で、完全に実装することは難しいらしいのだ。
思えば、JISかな入力や親指シフトの人は、アルファベットを打鍵するときはQWERTY配列のキーを使う。つまり、半角文字入力時と日本語全角文字入力とでは違った配列体系を使っている。自分の場合のAZIKもある意味、アルファベットとは無意味な配列部分もあり、すなわち配列はキーの刻印などを見て覚えているわけではなく、それぞれの文字の入力を指が覚えている状況である。
そうなのであれば、半角文字入力は従来通りQWERTYのアルファベットで、かな入力時はもっと効率が良いと思われる方式に切り換えも十分可能ではないかと思った。

そこで、Dvorak配列を基本として、自分(専)用のローマ字入力体系を作ってみることができないだろうかと考えてみた。

条件としては、ATOKのローマ字カスタマイズで実装できること。つまり、QWERTY配列の「js」は、Dovorak配列では「ho」となるので、「js=ほ」と割り当てるような感じ。さらに、ACT、AZIKのように二重母音拡張と撥音拡張を母音キーの上下段に加える。
ACTでは、拗音の入力がY(QWERTYではTの位置)ではなく、更に入力しやすいキーに割り当てられているが、自分の場合は当面Y(QWERTYのT)で打鍵する基本形を実装し、後で可能ならACTを参考に割り当ててみる。また、特殊拡張は自分で使うのに極めて頻度が高いものに限定する。
つまり、基本的にACTの配列を参考にした独自配列を作ってみたい。

しかしながら、ATOKでは、Dvorakの「wvz」に相当するキーが句読点と中点で、この文字を最初の文字とする配列を割り当てることができないようである。そこで、残念ながら完全なDvorak配列を諦め、この三つのキーを「qwe」の位置に、「vwz」の順で割り当ててみようと思っている。これなら、おそらく、何とかできるのではないかと考えているが、現時点ではまだ配列の一覧を作成している段階なので、うまく行くかどうかは全く不明である。

(2007/1/10)

補足 2021/12/26

高効率の入力方式を考案したら、それを実装して実用してみたい。すなわち、その方式をどうやって使うのかと抱き合わせで考えなければならない。考案当時の2007年には、まだGoogle日本語入力はなく、Windows用のIMEとしてはMS-IMEかATOKの二択という状況だった。普段使うATOKで実装できなければ自分にとっては意味がないので、ATOKで実装できることが第一の要件だった。
AZIKを使って拡張入力に慣れた自分は、Dvorak配列ベースのACTをATOKで実装したいがそのままではできない。もちろんまだgACT10もない。配列変更のアプリケーションもよく知らず、とにかくATOKのローマ字カスタマイズで何とかできないかということで、先行方式を参考に独自でやってみることにしたのである。

QWERTY配列自体をDvorak配列に変更するならACTなども一部実装できたかもしれないが、キーボードの基本配列を変更すると他の環境への移行などに支障があるので、それも選択肢には入れず、IMEのローマ字定義の変更だけしか考えなかった。

(2021/12/26)

配列案は完成

ATOK用の独自配列を作ってみる案は、一応完成し、これから定義の登録作業に入れるかどうかと言うところである。配列名は決めていない。
特徴としては次のような感じ。

要するに、キーボード自体は従来のQWERTYのまま、ATOKのローマ字カスタマイズで実装できることを条件とする。QWERTY配列のキーボードをDvorak配列でのアルファベット配置に読み替え、Dvorakローマ字をACTを参考に拡張する。
ただし、拗音は当面DvorakのYを使い、特殊拡張や専用キーなどはAZIKの法則を流用し、既にAZIKを覚えている人(自分)が覚えやすいように考えてみる。

今のところの調べでは、通常のDvorak配列に読み替えると句読点にもアルファベットが割り当てられる為、これらがATOKでは定義できない。そこで、その部分は配列を都合がよいように入れ替えるなどの代替案を試みた。

(2007/1/11)

新作成配列を使って

ATOKへのローマ字登録は無事出来た。早速その配列を使って書いてみている。まだまだ完全には覚えていないため、実用に至らない程遅いが、自分で決めた配列であるために、覚えにくいということは無い。

あと、今日は拗音の配列を再考することと、外来語の音をどうするかを考えて、作成する配列をひとまず確定する予定。

仕様が固まったら紹介することとする。

名前をまだ決めていない。

(2007/1/12)

ゆっくり、少しずつ

まだ名も決めていない、Dvorak配列を元にした独自配列を使ってみているが、実用しているうちに、少しずつ覚えてくるものだ。やっと、だいたいのキー配列がわかってきて、何とかこのような文章が入力出来るようになってきた。
たった3行を入力するのに、10分以上も要している。

色々考えて、拗音はやはりYではなく、ACTに倣い右手の中指キーで打鍵する事を考える。薬指は、最下段が読点で無理なので、同指打鍵になっても全て中指で打つ。

あと、外来語、配列表を作って調整する。

(2007/1/13)

独自ローマ字配列(名称は考案中)

作ってATOKに実装してみた。(配列表や図は、最下部に掲載。)
一言で言うと、QWERTYのキーボードにDvorak風配列を被せ、ACT風に拡張した独自行段系かな入力配列。ATOKで実装できることを第一条件として、配列を工夫した。

具体的には、次のような特徴がある配列とした。

まず、Dvorak風にしてみたのは、QWERTY配列よりも打鍵しやすいと言われているからである。母音が右手に集中するため、打ちやすい左右交互打鍵が多くなる。ただし、Dvorak配列は、そのためのキーボード(選択肢が限られる。)を用意したり、常駐ソフトなどを使って配列を変更しておかなければならない。
このため、IMEのローマ字カスタマイズのみで実現してみることとした。従って、アルファベット入力時には元通りのQWERTY配列になるし、キーの字面で打鍵の綴りを覚えるのは無意味である。
このことは、キーを見ても無駄という事であり、タッチタイピングを出来る事が少しの条件になるかもしれない。更に、Dvorak配列をマスターしている人、また、ACTないしはAZIKを使える人も、有利にマスター出来ると思われる。

条件に基づいてIME(ATOK)のローマ字カスタマイズをする場合、Dvorak配列では右下にあるWVZが、QWERTYではカンマ、ピリオド、スラッシュとなり、このままATOKではこれらキーに定義を割り当てられないようなので、左上の3つのキーと取り替え、句読点の位置をQWERTYの場合と同じにする。
また、日本語では頻度が高いとされるK(カ行)の打鍵をしやすくする為、KとCも交換し、図のような配列をQWERTYに被せる形で、ローマ字を定義する。

ローマ字の定義は、Dvorakでの普通のローマ字割り当てを基本とし、ACT及びAZIKに倣い、二重母音拡張、撥音拡張をそれぞれの母音の上下段に割り当てる。(ただし、これら母音・撥音拡張キー単独では機能させない。子音の第1キーとしても割り当てる為。)
また、撥音、促音、長音の専用キー、更には捨て仮名(小文字)の第1キーも設定し、これらはAZIKでの相当キーに割り当てる。Dvorak配列でも、それらキーが概ね都合の良い位置にある。

シャ行、チャ行についても、AZIKに倣い、XとC(無論、Kと入れ替え後の)を子音キーとして割り当てる。SHやCHのHに相当するキーや、SYやTYのY等の拗音化キー無くして各行の文字が定義出来るからである。

さて、拗音化キーは、当初はY(QWERTYのT)のみとすることで考えていたが、確かにこの位置は打鍵がしづらい。そこで、ACTを参考に子音第 1キーと同段の、右手人差し指キーを、拗音化キーとして用いる。ACTでは、右手中指キーの場合もあるが、前述のとおり、この配列では右手中指最下段は読点の為、例外となる規則を設けなければならない。そうするよりは、同指打鍵が発生する場合があるとしても、全て右手人差し指キーとしたほうが、自分としてはわかりやすい。

残るのは外来語などの特殊音の割り当てである。まず、ファ行及びヴァ行は、それぞれF、Vを当てることにする。ウィ、クァ、ティ、ディ等(撥音拡張等も含めて)は、WやKを第1キーとして、第2キーに、すぐその右横のキーを割り当て、QWERTYでWE、IO、KL、HJを子音キーとする。しかし、トゥ、ツァやドゥも第1キーはティ、ディと同じであるため、ここで例外が発生する。この場合は、第2キーを第1キーの二つ右隣とし、さらにそれでも重複する場合は、第1キーの直上のキーを第2キーとした。
また、これもAZIKに倣い、ウォーやフォーを、ウォウやフォウに代えて、これら外来語のウ段二重母音拡張とした。

その他、ACTやAZIKでいう特殊拡張は全てオプションとし、必要に応じて登録する事にした。

(図・略)

上が配列の配置概要図(PNG)。配列一覧は添付のファイル参照(OpenOffice.orgから作成したPDF)。

(2007/1/13)

独自配列の名称

配列の名称を考えた。「AOUR(配列)」とする。
これは、QWERTYのまま独自流Dvorakを被せ、独自流ACT/AZIKをATOKに実装するという亜流のやり方。この「亜流」をこの配列で打鍵して、それを元のQWERTYで読んだ時の綴りが「AOUR」なので、それをそのまま名前にする。

「ありゅう」と読んでも良いが、「エー・オー・ユー・アール」とか、その他英語読みでも良い。

(2007/1/14)

名称の変更

ずっと「AOUR配列」という名称を使ってきたが、配列はキーボードのキーそのものの並びを指すような気がする。ローマ字入力をローマ字配列というと少し意味が異なってくる。
AOURは入力方式なので、「AOUR配列」も「AOUR」又は「AOUR入力」と読み替えることにした。
ただし当面は「AOUR配列」でも差し支えない。

(2020/06/22)

配列という呼称

かなの入力方式には、ローマ字、JISかなや親指シフトなどが一般的で、それ以外でも多くの人が様々な方式を考えているが、たいていその方式のことを「○○配列」と呼んでいる。自分の方式もAOUR配列、と「配列」を使っている。
だがやはり、配列という言葉には違和感がある。配列は並びというイメージで、キー配列というとQWERTYやDvorakなどキーそのものの配列、JISかな入力の配列など盤面そのものを指して言う言葉のように思う。

かな入力の割当を変更してしまう場合は、確かに配列と呼んでもそうおかしくはないと思うが、自分の行段系入力の方法は方式の変更であって、配列というとDvorakをベースにしたもの、という感じである。Dvorak配列をベースにATOKでカスタマイズできるように一部のキーを入れ替えた配列で、その配列上で行段系の入力方式を考案しているわけなので、配列というよりは方式と言ったほうが良い。
ローマ字入力も、アルファベットというかQWERTY配列上で行段入力をする方式で、ローマ字配列とはあまり言わないのと同様である。

従って、今後はAOUR方式、AOUR入力方式、あるいは単にAOURなどと言いたい所なのであるが、これを変更するとなると大変なので、とりあえずは今後も他の配列に倣って自分のところも配列で良いかと思いつつも、今後少しずつ名称を含めてサイトのほうを変えていくかもしれない。

(2020/06/22)

AOUR(入力)

これまでずっとAOUR配列と称してきたが、用語の見直しを機に、「AOUR入力」あるいは「AOUR」という名称に改めていくことにした。改めるのは呼び名だけで、方式そのものの内容は変えないので、これまで通りAOUR配列と呼んでもらっても差し支えは無い。

理由は前の記事の通りで、「配列」というとキーそのものの並びを指すと思うからである。Dvorak配列をATOKカスタマイズができるよう一部を入れ替えた配列を考え、その配列上で各音各音節、拡張入力の打鍵順を定義したもので、一つの入力方式でしかない。
ローマ字配列ではなくローマ字入力というように、AOURも配列というより入力方式であるとしたほうが自分の中では引っかかりがないのである。

(2020/06/25)