キーボード入力考(別稿)

キーボード入力考(別稿)

先月書いた同名の内容をもう忘れて似たような内容のものを書いたので、別稿として残しておくことにした。

2022-07-12

CtrlはAの横に

自分にとってPCのキーボードにおける一番の問題は【Ctrl】キーの位置である。マウスになるべく頼らず極力キーボードで操作をしようとすると、【Ctrl】キーは必須で、コンビネーション操作で多用する。
よく使うキーという位置づけなのに、標準では、【Ctrl】キーは左下の角にある。そんな押下しにくい位置にあってはダメで、右手小指をずらせばすぐに打鍵できる【A】の横になければならない。
この【A】の横は標準では【Caps】キーになっている。【Caps】キーは、入力英字を大文字に固定するためのキーである。英文入力ではそういう必要性もあるのか知らないが、和文の場合はほとんど必要な場合が想定されない。使用頻度が低いキーが打鍵しやすい位置にあるのは無駄であり、多用する【Ctrl】キーと入れ替えるべきである。

この二つのキーの入替は、Windows側でやる場合にはレジストリ変更や読み替えソフトの使用が必要になったりする。知る方法は全て設定変更に管理者権限が必要で、会社のPCなどでは勝手にできないようになっている。
優秀なキーボードは、そういうニーズのためにハードウエア側でできる場合が多いので、どうしてもそういう環境でこのキーを入れ替えようと思ったら、そういう方法によるしかないのは難点である。

US配列

キーボードの配列はUS配列が良い。英語配列などとも言われているが、国内で標準的なJIS配列と使い比べてみたら、おそらく誰でもUS配列の良さがわかる。
それは単純にかな入力用の文字刻印が無いというようなことだけではない。キーボードの中心がホームポジション位置の中心とも揃っていて、バランスが良いので打鍵に負担がかからない。記号の配列も合理的である、大きなスペースキーでかな漢字変換の変換操作もし易い、【Enter】キーがホームポジション位置に近いのでブラインドタッチの効率が向上する、など様々な利点がある。

ただし、承知の通りUS配列は国内では少数派であって、製品としても選択肢が限られている。幸い、高性能なキーボードはユーザ自体がUS配列を求める人も多いので、高価なキーボードほどUS配列のラインがきちんと確保されているのは救いである。
それでも、Realforce等はこのところUS配列の選択肢がJIS配列よりずっと少なく、製品供給にも不安があるなど、冷遇されている事情はあって、不満と不安が募る。

グローバルな視点で見るとやはり標準はUS配列であり、今後国内PCメーカが次第に市場から撤退し海外メーカが台頭・標準になってくると、また、ローマ字入力が標準となっているので、かな文字刻印のあるJIS配列ではなくUS配列のもので十分ということにもなり、それが標準になっていくようなことも十分考えられる。

US配列は、英語キーボードなどとも言われるので一見、和文入力に支障があるようなイメージになってしまっているのも、誰かの何かの思惑があるのだろうかと疑う。IMEのオンオフ用の【半角/全角】キーや【変換】【無変換】キーがないなど、和文入力において不便だと思われているが、全くそんなことはない。

US配列ではIMEのオンオフは【Alt】+【`】のキーに割り当てられていて、実際【`】のキーは【半角/全角】キーと同じ位置にあり、操作は大して違わない。
ただし、この位置の操作は面倒でもあり、IMEの機能カスタマイズで【Ctrl】+【Space】などに割り当てて、ホームポジション位置のままでの操作ができるようにしておくのが鉄則である。実際自分はそうしているが、この操作はJIS配列キーボードを使うときにもそうしているくらいである。
また、【変換】キーについては基本的に【Space】キーで代替できるので何も問題がなく、それ以外のJIS特有キーは使用頻度が低いので、あえてキー割当を考えたりする必要もない。
すなわち、JISかな入力を行わないのであれば、US配列を使っても不便な点はなく、機会を得て今すぐにでも切り替えて問題ないと思われる。

テンキーレス

キーボードにはフルキーボード、テンキーレス、コンパクト・60%などのキー数・サイズがあるが、自分として一番丁度良いのはテンキーレスである。ただし、テンキーが不要というわけではない。
フルキーボードは、大きすぎてスペースを取り過ぎる。右側がテンキーになっているので、その分マウスが右に遠くなるのが難点である。持ち帰るために大きな動作となり、それが疲労にも繋がる。
コンパクトな省スペースキーボードは、扱いやすい利点はあるが、独立したキーで省略されているものがあると、そのキーを使うときに苦労して不便な点がある。HHKBもそれで、カーソルキーやファンクションキーが独立していない。操作はだいぶ慣れたが、それでもないと作業がしづらい場面は多い。そうなると丁度良いのはテンキーレスの大きさである。フルキーボードからテンキー部分を省いた配列のものである。

前述のとおりテンキーが不要というわけでもないので、テンキーレスキーボードを使いながら独立したテンキーを用意して、テンキーレスの左側に配置して使っている。こうすることで、メインキー部分がモニターの中心位置に配置することができるので、文章書きなどで不自然な姿勢にならない。
テンキーが左側にあるフルキーボードがあれば解決するのだが現状そのような配列のもので他の要件を満たすものはない。

RealforceかHHKB

具体的な製品で言えば、東プレのRealforceかPFUのHHKBが良い。無論US配列のモデルである。
いずれも同じ東プレの静電容量無接点のスイッチを使っているキーボードで、押下圧は標準的な45gのものが丁度良い。変荷重も良いが、等荷重のものが一番打鍵感が良い気がする。
静電容量無接点スイッチは、その機構上チャタリングが起こりえない。実際にそれが起こることは今まで無かった。耐久性も高く、最初に購入したそれらキーボードも10年以上経つが、特に問題なく今でも使うことができる。今は新世代のものに乗り換えているが、その直前まで、10年問題なく使えた。Realforceはアイボリーモデルでも意外と変色もなく、ずっと快適に使える製品だと思って良い。

このような品質の良い国産キーボードは、おそらくRealforceとHHKBくらいしかない。その分高価ではあるが、価格相応の性能だと思っている。インターフェース機器類は、なるべくそういう良い物を選ぶべきである。
HHKBはHybrid Type-Sで、接続方式はBluetooth無線である。それまではずっとUSB接続のものだったので、無線となると遅延や接続の安定性の問題はどうなのかと心配なところはあったが、基本的には問題ない。
ただし、Bluetooth無線の接続方式は接続の安定性・信頼性が有線接続より劣ることは間違いない。キーボード側には電源すなわちバッテリーも必要で、これが消耗してくると誤作動を起こしたりもするし、一定量以下に消耗するともちろん接続・使用ができなくなる。

無刻印と静音スイッチ

HHKBは、今は無刻印のモデルを使っている。キートップに英字も何も刻印されていない本当に無刻印なキーボードである。誰でも、ブラインドタッチができるならば問題なく無刻印キーボードを使うことができる。数字や記号など怪しい部分はあっても、使用頻度が低い文字の分については、正直なところ気にしなくとも良い。手探りで何度かミスタイプをしたとしても、競技をしているわけではないので特に問題はない。

無刻印キーボードは、ブラインドタッチができるということを証明するようなものでもあって、自己満足でもあるが、配列を習得してしまった後、きちんと打鍵する指が定まっているのであれば、無刻印で問題ない。刻印はあって困るようなものでもないが、無くても問題ないなら、ある必要がない。
ただし、パスワードを正確に入力しなければならない時など、記号や数字が不安だと困ることは多少ある。刻印があるキーボードとうまく併用するような使い方も考えるべきである

RealforceもHHKBも、静電容量無接点のスイッチの静音タイプを使用している。
無音になるわけではないが、プラスチックのカチャカチャという高音部の音が軽減されて、静かになり、またそれが高級感さえあって、打鍵に益々集中できるというものである。世の中には賑やかなスイッチのほうが良いという人も少なくなく、静音スイッチだと底打ち感が少し変わるので気に入らないという人も居るが、自分は今後も、静音スイッチのほうを選択していきたいと思っている。

ブラインドタッチ

キーボードの操作は、基本的にブラインドタッチである。ブラインドタッチとは、キーボード盤面を見ずに入力操作を行うことであるが正しい運指を身に付けることでもある。自分はもうだいぶ前に独習でできるようになった。
独習とは言ってもきちんと教本の類を使って、正しい運指を覚えたので、数字などは少々怪しいとしても、基本のアルファベット部分については標準的な指使いをしている。実際、その独習を始める時点で似非ながらも一部ブラインドタッチはできていたし、それなりに高速に打鍵もできていたが、担当する運指を矯正して、きちんと習得したら、本当に画面だけ見つめながら打鍵ができるようになった。

ブラインドタッチができることは、視線の移動を減らすので、疲労軽減にはとにかく必須である。自転車や車の運転と同様に誰もが習得すべき技能である。

なお、ブラインドタッチは差別用語だと誤認識している人が一定数いるが、センスの良い和製英語であるだけで、ブラインドタッチと聞いて気分を悪くする人など一人も居ない。そういう言葉狩り病の人たちが好んで使う、本来の用語とされるタッチタイピングという外来語のほうが、指すものと内容が異なっていて意味が不明である。

IMEはATOK

IMEのことを指して日本語入力システムという言い方も自分としては難があると思っている。
日本語という言語を入力するのではなくて、その言語の文章を入力するものだからである。逸れるが日本語ワープロという言い方も同様で、英文タイプとか英文ワープロなどというのだから、和文ワープロとでもいうべきであって、日本語入力システムも和文入力システム、などと言うべきである。日本語文入力システムという言い方も、まだ許容はされるが、自国の言語を指して「日本語」という言い方はあまり感心しない。学校の授業も「日本語」ではなく「国語」であって、「日本語」という場合は日本語以外の視点から言語そのものに注目する場合のみに使われるべきものなのである。

IMEのインプット・メソッド・エディタ、もよくわからない外来語で、以前に使われていたFEP、フロント・エンド・プロセッサもまた意味がよくわからない。その意味ではまだ日本語入力システムのほうが端的でもあるのだが、それでも自分は単にIMEというようにしている。

閑話休題。そのIMEは、自分はATOKを使っている。PCを使うようになって以来、ずっとATOKである。MS-IMEは基本的には使わない。Google日本語入力(この場合は固有名詞としての「日本語入力」なのでそう表現せざるを得ない)は代替的に使うことがある。Windows環境において現時点ではそれ以外のIMEで普通に選択できるものはない。
ATOKは、様々な仕組みで高精度な変換を第一に考えている所があって、設定項目も細かく、使いやすい。具体的にどれがどういう変換がというのではないが、相対的にみて、ストレスなく入力ができるのだから、それこそが重要なのである。
言葉狩りの問題もあるが、それを差し引いてもATOK以外は選べない。

それでも、共用端末や業務システム端末などではあえて一太郎やATOKを入れていないものが多いので、そういう場合は素直にMS-IMEを使わざるを得ない。MS-IMEも変換そのものに支障があるわけではない。それは仕方ないし常用するわけではないので我慢して使うのであるが、その場合でも支障が無さそうならATOKの操作体系に変更して使う。MS-IMEとATOKでは、ローマ字それ自体は同じだとしてもキー操作はそれなりに異なるのである。そのくらいの変更は認めてもらいたい。

入力方式はAOUR

今の我が国での標準的な入力方式はローマ字入力で、多くの人がこの方法を使っている。JISかな入力はワープロ専用機の頃までは主流だったが、PCの時代になってローマ字入力が習得するにも便利だということになり、今使っているのはその頃から使い続けている人が中心で、全体の1割未満とされている。他にも、親指シフト方式もまだ健在で使っている人もそれなりにいるが、ハードウエアに依存するところがあったりする。
本当ならIME毎にもっと違った入力方法が様々存在しても良いとも思うが、標準一つに統一されないとサポート従事者側の都合が悪いので、ローマ字入力だけ覚えれば十分という事にされてきた。

そういう自分も当初はしばらくローマ字入力を使っていたが、ローマ字入力では飽き足らず、結局独自の入力方式を使っている。
簡単に経過を言えば、ローマ字入力からローマ字拡張のAZIKを使い、DvorakをベースとしたACTを使いたいと思ったが、キーボードへの依存やATOKの制約などからそれは不可能だったので、ローマ字カスタマイズで実装できるDvorakを土台とした方式を考えた。
それがAOURで、今から約15年ほど前にそういう定義を使い始めてローマ字入力から切り替え、ずっとそれを使っている。

ローマ字入力などから入力方式を変更する人など、1%にも満たないと思うが、ローマ字入力よりも打鍵数が少なく、母音が並んでいることや拡張入力のルールも整理してあるので、ローマ字入力では割り当てられていない音節なども少ない打鍵で入力ができることなどにより、効率的な入力ができるようになっている。
このような方式、優れた方式は他にも多数あるが、ATOKの定義変更だけで実装できるというものは多くない。
一般的な入力方式、使い慣れた入力方式からの変更は、当然に覚える手間と時間が必要である。覚えたとしても、十分な入力速度に達するのにもそれなりに時間がかかる。最終的にはその方式のほうが従来の方式よりも良いのだと念頭に置いて、十分な速度に達するまでは我慢しなければならないが、そうなってからは、とにかく快適である。
自分も、まだローマ字入力は忘れていないので普通に使えるが、このAOURの方式のほうがずっと快適で高速である。
万人に勧められるものではないかもしれないが、実際習得して快適になっていることは事実であり、それを求めるためにはそのような学習コストも承知の上で取り組まなければならない。

ローマ字入力の誤解

JISかな入力との比較で、ローマ字入力は1文字入力するのに子音と母音と2回打鍵しなければならないから、絶対的に入力速度が遅くなる、と言われる。
ある意味正しいが、実際にはそうならない要素もあるので単純にそうとも言いがたい。
幾つか理由を挙げると、JISかな入力だって、拗音などの小文字や頻度高く使う助詞の「を」や句読点などは【Shift】キー操作を必要とするから同時押しでも2打鍵とも言える。濁音半濁音も、「゛」や「゜」を加えて押下するので2打鍵である。なので、JISかな入力も2打鍵文字はある。
ローマ字入力では数字はそのまま入力できるのに対し、JISかな入力ではモード切替が必要になるし、もちろんその習得も別に必要である。拗音の「きゃ」などはローマ字では【kya】の3打鍵だが、JISかなでも【き】と【Shift】+【や】なので3打鍵であり同じである。
そのような、まずは打鍵数の優勢に関する誤解がある。確かにJISかな入力のほうが打鍵数は少ないが、圧倒的に少ないということはない。1/2ではないということである。

より決定的なのは、JISかな入力は4段分のキーを使うので、もちろん習得しにくいという面があるほか、ブラインドタッチも独特の方法によらなければスムーズに行うことができないので、3段範囲のローマ字入力と比較して、本当に十分にJISかな入力をマスターしているような人でなければ、入力速度に差は出ない。
Realorceのタイピングの大会のような場でも、JISかな入力で上位に来る人ももちろん居るが、ローマ字入力の人も多く、JISかな入力に適わないということはない。

結局、様々な特徴の違いがあるので、条件を同じくして比較すること自体が無意味であるのだが、おそらく親指シフト、NICOLA配列との比較においては、ローマ字入力の優位性はおそらく低い。
親指シフトは、シフト操作もあって打鍵数的にはこれもローマ字入力同様に1音2打鍵とも言えるのであるが、かなは全て3段の範囲に割り当てられていて、その点では高速に打鍵ができる。十分に上達した場合は間違いなくローマ字入力より論理的には速いと思う。

いずれにしても、ローマ字入力も十分に上達した人との比較であれば、かな入力とは思うほどの差異は出ないものなのである。

またもう一つ、ローマ字と英語を同一視する間違った考えもあるようだ。ローマ字入力は和文入力に英語を使うことになるからけしからん、という考えである。
アルファベットは記号でしかない。かな文字を行と段に整理してその文字を指定する効率的な方法がローマ字であるのに、それをわからない人が少なくない、どうしてもかな入力を推したいがため、ローマ字を否定したい理由がそれである。
「か」の入力には、ローマ字入力では【ka】となるが、これは【k】+【a】として最初は習得したとしても、習得後はあくまで【ka】と認識し瞬時に順に打鍵するので、打鍵数は多くても実際の速度の差はほとんどない。
それよりも、JISかな入力で指の移動範囲が広く、目的のキーの到達するまでの移動速度のほうが遅いのではないかと思うので、同じ速度でJISかな入力2文字分入力することはできないと思っている。

これは、ローマ字入力だけではなく、AOURなど行段系全てとJISかな入力などかな入力系について言えることでもある。