JIS配列とUS配列
自分はずっとUS配列を標準的に使っているが、国内で一般的なJIS配列のキーボードと比較して何が良いのかをまとめておくことにする。
名称
自分はこのところ、JIS配列、US配列と呼んでいるが、定まった名称がない。
JIS配列のキーボードはJIS規格に基づき、US配列はANSIの規格に基づいた配列ということになっているが、いずれもキーボードの名称としては配列の名称だったりキー数を基準にした呼び方だったりする。
JIS配列であれば、JIS配列のほか日本語キーボード、106/109キーボード、日本語配列などと呼ばれ、US配列であれば英語キーボード、英字配列、英語配列、ASCII配列、ASCIIキーボード、USキーボード、101/104キーボードなど多数の呼び方がある。
JIS配列は日本語・和文入力をするのに、US配列は英語・英文入力に都合が良いようになっているとしても、JIS配列でも英語英文入力はできるし、US配列でも日本語和文は入力できる。日本語や英語という名称を使うと、その言語以外の入力ができないような印象を受けるので、自分は最近ではあまり使わないようにしている。
JISとUSの違い
配列の違いはWikipediaなどの画像で比較できるとおりである。Googleで検索すると他にもわかりやすく画像で比較されているところが多数ある。
JIS配列とUS配列とでは、アルファベットの配列は同じだが記号の配列が異なるのと、最上段の左キーや最右列キーの有無での違いがある。機能キーに関しても、【Enter】、【BackSpace】、右【Shift】、【Space】の形状が異なる。US配列には【変換】、【無変換】、【カタひら】、【半角/全角】がない。
同じシリーズのキーボードでJIS配列とUS配列と両方がある物では、JIS配列の中央位置が少し左寄りになっていてバランスが異なっている。
遍歴
自分はそもそも、JIS配列のキーボードで使い始め、日本ではJIS配列しか選択肢がないものと思ってずっとJIS配列を使っていたが、十数年前にキーボードに興味を持つようになってから、US配列もあると知った。HHKB Pro2で初めてUS配列のキーボードを使ってみたのをきっかけに、US配列の利点が自分の使い方に合うと思ったので、以後はUS配列を使うようになった。
ノートPCのキーボードもJIS配列であったが、ドライバで切り替える方法があり外付けのキーボードでUS配列のものを使うようになった。
それ以後、ノートPCの乗り換えの際にはUS配列のキーボードを選ぶようにしたが、選択できるPCは限定されるのが実情である。
今は、自宅PCもキーボードも全てUS配列であるが、会社PCは依然としてJIS配列であるので二刀流ということになる。
US配列の利点
- 見た目がスマート
- 配列のバランスが良い
- 運指がスムーズ
- 合理的な記号配列
- 初心者などが使っていない
US配列は、キー数がJIS配列より少ない。また、当然ながらかな入力のことは考えられていないので、かな刻印がない。【Enter】キーが横方向には長いが縦方向は1段のみであるなど、見た目も安心感のある配列になっている。
キーの列数の違いから、ホームポジションに指を置く時の位置が、JIS配列に比べて中央に近く、配列のバランスが良いのもUS配列のほうである。人によってはこのことが疲れの軽減に繋がるとも言う。また、右側のキー列数が少ない分、【Enter】キーがホームポジションに近いので、かな漢字変換の操作がしやすい。【BackSpace】キーも2キー分の幅の大きさで、【変換】等のキーが不要である分【Space】バーが大きく、変換操作や訂正操作がJIS配列よりしやすい。従って、きちんとした指使いをする分において運指がスムーズなのである。
JIS配列では【「】【」】のキーが縦方向に並んでいるが、US配列では横方向に並んでいる。【;】【:】や【'】【"】が一つのキーでShift切替になっているなど記号配置も合理的である。
US配列を使う人は、PCに詳しい人や職業的に打鍵する機会がある人、古くから舶来の機器・キーボードを使っていた人などが多く、初心者なのにUS配列を使うという人は国内ではほとんどいない。このため、US配列を選んで使うと初心者ではないグループに進級したような気がして少しの優越感も味わえる。
欠点と言われるものへの対応
US配列の欠点というのは思い当たらないが、JIS配列にあるキーがないことで困る可能性があるのは、【半角/全角】に割り当てられているIMEのオンオフである。US配列では、【Alt】+【`】のキーに割り当てられているので、この操作が煩わしくなければこれで問題ない。【`】はJIS配列の【半角/全角】の位置にある。
そうでない場合は、IMEのキー割当カスタマイズなどにより任意のキーに割り当てなければならない。自分は【Ctrl】+【Space】に割り当てている。【Alt】キー単一操作に割り当てたり他の組み合わせに割り当てたりする人も居るようだ。
IME機能の割当はJIS配列を使うときも共通なので、今ではJIS配列においてもIMEオンオフは【Ctrl】+【Space】を使うようになった。
US配列では円記号【¥】のキーがないが、バックスラッシュの表記に置き換わっているだけである。これは、円記号の文字コードとの共通性を知っている人ならば特段迷うことがない。
鉤括弧や句読点の刻印もないが、英数字で対応する記号の刻印がそのキーになっているだけなので、これも頭の悪い人以外は少し考えればすぐにわかることである。
選択肢の少なさ
国内ではJIS配列のシェアが圧倒的に高い。メーカー側のコストの点もあって、国内で販売されているPCやキーボードはJIS配列がほとんどである。PC以外の機器もQWERTYキーボードの配列はほとんどJIS配列である。US配列を使う人は少ない。
PCを選ぶ場合もそうだが、家電量販店などでキーボードを購入しようとしても、ほぼ全てがJIS配列のもので、US配列を揃えているのはPCでは海外メーカーのネットショップや、一部の国内ブランド、キーボード製品ではパワーユーザも選ぶような比較的高価な製品ブランドに限られる。実際にはUS配列の製品もあるのに、国内向けとしては販売していない場合も多い。左ハンドルの国産車は逆輸入でしかあり得ないのと同様に、US配列を使いたいと思っても、手軽に入手できない事情はある。
PCのアプリケーションは、舶来のものならUS配列が基準になっていると思われるが、日本語でのヘルプやマニュアルでは、JIS配列のキーボードをベースにして説明されている。すなわち、US配列を使いながらこのような説明書きを参照する場合は、US配列をJIS配列に対応させて考えなければならない場合が多い。国産のアプリケーションなら尚更で、そもそもJIS配列を念頭に開発されていて、US配列の場合はそれに対応させて読み替えなければならず、不便を感じることもある。
JIS配列キーボードを選ぶべき人
- 初心者
- JISかな入力を使う人
- JIS配列特有のキーを多用する人
- 周りと同じが良い人
- 面倒なことを考えたくない人
初心者は、素直にJIS配列を選んでおけば間違いない。周りも皆JIS配列であるし、アプリケーションのマニュアルを参照する際もJIS配列基準なので、キーボードの使用に関して不明な点があればすぐに回答を得られて対応が出来るからである。周りと同じが良いという人も同じ理屈でJIS配列を選んでおけば間違いないし、US配列との対応を一々考えたり、キーボード購入時に配列で悩んだり、利点欠点を色々調べたりする手間を省きたいという人もJIS配列を選んでおけば間違いない。
JISかな入力をするという人は、US配列では不便になるので、JIS配列一択ということになる。US配列ではキーの列数の違いで、本来有るべき位置に一部のかな入力キーがないのである。
JIS配列にしかないキーを多用するという人もJIS配列を選ぶべきである。ただし、そういう特有キーの機能は概ねIMEの変換操作に関するものであって、これらはカスタマイズにより他のキーへの割当が可能であったり、既にそれらキーを使わなくても機能が実現できるようになっている場合がほとんどであるので心配は無用。
US配列を選ぶべき人
- JISかな入力を使わない人
- 英文入力やプログラムコーディングを行う人
- キーボード入力が多い人
- 職業的に打鍵する人
- PCやキーボードマニア
- 周りと違った物を使いたい人
JISかな入力を使わない人、すなわちローマ字入力を使うという人なら、US配列で基本的に問題ない。英文入力が多かったり、プログラムなどのコーディングを行う人も、英数字や記号の入力がしやすくなっているUS配列を選ぶべきである。ほとんどの言語は海外で考案され定義されているが、各種の言語で使われる記号類も海外で使われるキーボードで打鍵しやすいものが使われている傾向にあると思われるので、世界的な標準であるUS配列のほうが都合が良いと思われる。
運指が適正になったり、ホームポジションから指の移動が少なく入力が完結することやキーボード全体のバランスが良く疲労の軽減に繋がるので、職業的あるいは私的でもキーボードからの文字入力が多い人はUS配列のほうが適しているかもしれない。
そういう点で、多くのパワーユーザもUS配列のキーボードを選んで使っているため、自分もそういうグループだと思うならば、あるいは自分もそういうグループに位置付けられたいという野心で、さらには単に他の多くの人と違ったものを使って自慢したいという天邪鬼的な人においても、US配列を選ぶ面白さはあると言える。
AOURへの影響
自分は、他の類似配列やDvorak配列をベースにして入力方式をローマ字入力のカスタマイズにより既存の方式とは全く異なったものにしている。これも当初はJIS配列の環境で定義を考えながら、US配列のキーボードでも同様のことができるようにしてある。
すなわちATOKなどの定義ファイルは共通で、定義ファイル一つで双方の配列で使えるようにしてあるのである。
今はむしろUS配列をベースとして調整しているが、JIS配列であっても問題なく使えるようにはしている。
今後の展望
今、JISかな入力を使っている人は全体の1割程度と言われている。残る9割はほぼローマ字入力であって、今後かな入力の人が増えていくとは思えないので、そういう状況からすると、既にキートップのかな刻印は不要の物になりつつある。
想像ではそういう状況でさらにローマ字入力が10割に近づけば、今一部のキーボードでもあるように、かな表記なしのJIS配列キーボードが主流になるかもしれないし、それならUS配列で良いという動きも加速され、US配列のシェアは高まっていく。
また、PC市場、国内メーカーの産業規模は縮小している。合理化などで海外標準に合わせていく動きも加速するかも知れないし、国外メーカー品が台頭してくるかも知れない。当面はJIS配列のキーボードが主流という状況は続くが、上記のような事情の進行や主要国内メーカーが市場から撤退するような事態になると、キーボードの標準はUS配列へと一気に進むのではないか。
仮にそうなった場合でも、QWERTYの配列自体は変わらないし、ローマ字入力自体もそのま使えると考えておけば、配列の違いは多くの場合少しの慣れで何とかなるようなものでもある。