ATOKでの和文入力・実践編

入力作業

「ATOKでの和文入力」では、ATOKの基礎操作を中心に紹介していたが、もっと具体的に和文入力はどのような手順で行うのかについて解説する。
あくまで自分の場合の方法であるので、標準的なものと異なっている部分は多いかも知れない。キー操作も、自分でカスタマイズして設定している操作で紹介している。そういうキー定義については「US配列でATOK」などに詳しく書いた。

ATOKのオンオフ

ATOKのオン状態とは、全角文字が入力できる状態、すなわちこれがかな漢字変換により和文入力を行うモードの状態である。一方のオフ状態とは、ATOKを使わない状態、すなわち半角英数字のみ入力が出来るという状態である。
これの切替は、自分は設定したキー操作[Ctrl]+[Space]によって行う。例えばブラウザの文字入力ボックスにフォーカスを移動した時(入力カーソルを表示させたとき)やテキストエディタを起動したとき、半角英数字を入力するならATOKはオフのまま。和文入力をするならオンにする。ただし、WZなどテキストエディタでは、起動時に自動的にオンに成るよう設定してあるので、あえてこの操作は行わなくても和文入力が行える。

かな漢字変換の開始

和文入力の基礎操作は全てかな漢字変換である。読みを入力して、漢字やカタカナなどに変換したり、ひらがなのままにしたりする。
読みの入力は、自分は自分の入力方式AOURによって行うが、普通の場合はローマ字入力ということになる。

ATOKにも様々な変換方法があって、自動変換や複合語変換などがあるが、自分は一般的な連文節変換のモードにしている。自動変換が便利そうなのだが、かなり多くの文節を入力した段階に至らないと変換してくれないので、自分である程度制御が利く連文節変換のモードを使う。これは特に設定しなくてもそのモードになっている。

変換操作のタイミング

変換操作は通常[Space]の押下によって行うが、この操作を行うタイミングも様々である。文節毎に変換を行う場合や、句読点を区切りとして変換を行う場合など。文節毎に短く区切って変換をした方が確実ではあるが、そのたびに毎回確定操作が必要で、操作が煩雑になってしまうという欠点がある。確定操作を行わないと、その箇所から更に読み入力の状態が続いたり、変換候補を表示させた状態なら次に入力するアルファベットが候補選択と間違われて、誤変換されてしまうこともある。

従って、文章を入力するときはなるべく句読点まで一気に読みを入力してATOKに任せて変換を行わせる。句読点変換の機能もオンにしておくことで、区切りとなる句読点の箇所で自動的に変換される。変換が正しくないときは、後述の修正作業を行うのである。

正確に言うとATOKの場合、[Space]キーで変換操作を行うのは基本辞書セット内の辞書が使われて、これらの辞書内から変換候補が表示される。そういう辞書セットは最大10セットまで設定できるが、予め人名辞書セットや郵便番号辞書セット、アクセサリ辞書セットなど最初から5つの辞書群が設定されている。
これらの辞書で変換したい場合は、[Space]ではなく[F2]~[F5]で変換操作をすることになるが、自分は[Ctrl]+[2]~[5]にも割り当てている。

確定操作のタイミング

確定操作は基本的には[Enter]を使うが、多用しすぎるような気がして、適宜[Ctrl]+[M]も使うようにしている。
その操作のタイミングは正しい変換が成されたときなのであるが、この確定操作をあえてしなくても、変換操作を行った後で次の読みの入力を行うと自動的に確定されるので、なるべくそういう風にすることで余計な打鍵を減らせて効率も上昇する。

ただし、変換操作の所でも記述したとおり、候補ウィンドウが表示されている場合はそのまま入力を続けると次に打鍵したアルファベットが候補選択の入力キーと間違われて別の候補が選択されて変換・確定されてしまう場合があるので注意が必要である。

変換候補の選択

たいてい一般的な用語や固有名詞なども、ATOKのAIが正しく判断して正しい漢字やかな表記に変換してくれるので、その後は確定操作をするか、次の入力を行えば良いのだが、同音異義語については正しい候補が表示されないこともあり、常に正しいとまでは言い切れない。
変換操作を繰り返し行うと、注目文節部分の別候補が表示されるので、その繰り返し変換操作により正しい候補を選択していくのが普通である。

標準では2回となっている指定回数変換操作を行った後に表示される候補ウィンドウでは、ひらがな候補、カタカナ候補や英語の候補までも表示される。
候補が多く、変換操作だけでは目的の候補に到達するまでに時間がかかると思われるときは、候補の表示を全候補一覧にしてその中から選ぶという方法もあるし、候補群の表示繰りをショートカット操作により行う場合もある。
全候補表示は[Ctrl]+[Space]、候補繰りは[Ctrl]+[D]で次候補群、[Ctrl]+[S]で前候補群である。

カタカナの後変換

予めモードを切り替えて入力せずに、読みを入力してから指定の文字種へ変換することを後変換(あとへんかん)と呼ぶ。ATOKのマニュアルなどでは「(後)変換」と表記している場合もある。多くの人は、カタカナに変換する時に[F7]キーを使う、その操作のことである。
そもそもATOKの辞書にはカタカナ語も含まれているし、よく分からない語はカタカナを候補にする場合もあるので、通常の変換操作でたいていの語は自動的に正しくカタカナに変換される。基本的にはそれに頼るのだが、さらに特殊な語などで変換されない場合や部分的にカタカナにする場合などは、明示的にカタカナに変換するために後変換を使う。 最初からモードをカタカナの固定入力などに切り替えるのも確実だが、それの方法のほうが手順が多く煩雑になるので使わない。固定モードにすると、戻す操作も必要になる。

後変換を使うのは、カタカナが最も多く、英字・英単語入力などでは、あまり使わない。ひらがなのままにしたいときも、ひらがな後変換を使うことが良くある。
なお、カタカナ後変換の場合、この操作を繰り返すと、末尾から1文字ずつひらがなに変換されていく。女子を含めて後変換をしてしまった場合に便利である。

後変換の操作

ところで、後変換は[F6]~[F10]に割り当てられているが、ホームポジションから遠い場所にあるキー操作となるので、この操作はあまり推奨できない。同じ後変換操作は[Ctrl]+[U]~[@](JIS配列の場合)にも標準で割り当てられていて、これを使った方が良いのだが、この方法はあまり知られていない。
特に自分は[Ctrl]を[A]の横、[Caps]と入れ替えて使っているので小指で[Ctrl]操作がしやすいため、後変換も後者のキー操作にしたほうが圧倒的に速いのである。
たとえば、カタカナ後変換なら[Ctrl]+[I]である。

US配列では[@]の位置が異なるので半角英字後変換は[Ctrl]+[ [ ]に割り当てている。[ [ ]キーは、JIS配列の[@]の位置である。

英字入力

和文の文章中の英単語などは、半角英数字で入力することが多い。一々ATOKをオフにして入力することもあるが、これにはたいてい英字入力モードを使う。[Shift]+[A~Z]の英字キーの打鍵で大文字始まりにはなるものの、自動的に英字入力モードになるので、それで打鍵していけば良い。

英単語等の入力後は、その段階で[Enter]又は[Ctrl]+[M]で確定の操作をしても良いが、もう一度[Shift]を打鍵することでモードが元に戻る。
大文字のみの英単語の場合はずっと[Shift]を押しっぱなしだと思うので、[Shift]を離せば元のかな入力モードに戻る。

全角英字を入力する時も、この英字入力モードを使った後で、英字後変換を使う事が多い。
英字入力モードで[Ctrl]+[U]だとひらがな後変換ではなく、[Ctrl]+[P]同様に全角英字後変換として機能するようだ。複数回同じ操作を繰り返すと、先頭だけ大文字になったり全て小文字になったりもする。

数字入力

数字は、一般的には半角で入力する場合が多いようだが、文章中では全角文字にしたい場合も少なくない。たとえば「3年生」「6時間」など一桁の数字を文章中で使う場合は全角数字を使う。
テンキーを接続しているときは、テンキーからの入力を必ず半角にするという設定を行っていると、ATOKがオンの状態でも半角入力が容易に出来る。だがテンキーレスのキーボードを使っているので、基本的に数字はメインキー上段の数字キーでの入力になる。

原則的には、直前の数字入力で半角で確定していると次に入力する場合も半角で入力され、全角の場合だと全角数字で入力されるようなのであるが、もちろん前回とは異なった種類にしたい場合も少なくない。
この場合は、後変換を使う。全角半角の関係は英字入力の場合と同様であるようで、数字を打鍵後、[Ctrl]+[P]で全角、[Ctrl]+[O]で半角である。
[Ctrl]+[U]での後変換に関しては英字入力と同じで、全角数字になるようだ。

記号などの入力

記号は、キーボード盤面に刻印のある記号の場合はそれを打鍵して入力する。句読点の他、感嘆符、疑問符、鉤括弧などがそれに当たる。キーボードにない記号については、ATOKにあらかじめ登録されている読みを入力して変換候補の中から選択して入力する。「ほし」の読みで「☆」や「★」を、「こめ」で「※」を入力するなど。
それでも登録されていない記号類は文字パレットなどから選んで入力する。文字パレットは、[Ctrl]+[F11]で表示される。

日付や時刻の入力

ATOKには日付の入力に便利な機能があって、「きょう」「きのう」「ことし」「いま」などの用語を読みとして入力し変換することで、日付や時刻を指定した書式での候補が表示されるので、それを選択して入力する。

固定入力への切替

予め特定の文字種を連続して入力する場合は、固定入力も便利であるが、その様な頻度は低い。英字のみ連続して入力する場合、半角カタカナのみ連続して入力する必要がある場合などである。文章中の単語くらいであれば、前述の後変換を使う方が良い。
固定入力への切替は、ATOKパレットなどからマウスクリックによって切り替える方法もあるが、[Ctrl]+[F9]でそのメニューが表示されるので、ショートカットキー操作によって切り替えたり元に戻したりする方が作業としては速い。

先頭・末尾文字の確定入力

「選考」の「選」、「傲慢」の「慢」のように、先頭又は末尾の1字のみを確定入力したい場合、変換をしてその候補を表示させた状態で、先頭の場合は[PageUp]、末尾の場合は[PageDn]キー操作でそのような入力ができる。
読みの難しい漢字、同じ読みの感じが多い場合、希にこの入力を必要とする場合がある。
ただ、この方法は、[PageDn]が先頭で[PageUp]が末尾なので、上下と先頭末尾の感覚が逆で、いつも逆に押下してしまう。最初に覚えたPC-98の[RollUp][RollDown]がDOS/V機の[PageUp][PageDn]と動作が反対であったこともあり、余計にわからなくなって、未だによく先頭末尾を間違えて、改めて入力しなければならなくなる。

また、ノートPCのようなコンパクトキーボード、60%キーボードでは、[PageUp][PageDn]が[Fn]キーとの組み合わせになるので著しくこの機能が使いづらい。
Thinkpadのキーボードでは、これらキーは独立してある。

修正作業

入力の修正

読みの入力を間違えた場合、変換操作前では[BS]キーで後退削除をしたり[Del]キーでカーソル位置文字を削除したり、あるいは[ESC]キーで入力部分を全て消去したりできる。[←][→]キーで修正位置にカーソル移動をすることができるが、この移動操作は[Ctrl]+[K]、[Ctrl]+[L]にも割当があるので、なるべくホームポジションで操作をするということを心がけるので後者の方法によりたい。

入力操作が高速にできるようになってくると、そういう操作をするよりも一旦[ESC]で消去して入力し直した方が速いと思ってしまうことがあるのだが、長い文節や読み部分になれば修正するほうが効率は良いはずなので、修正方法を確立したい。

読みへの復帰

よくあるのが、AOURやローマ字入力のつもりで、モードが英字入力のまま、ATOKがオフのままで、アルファベットがそのまま入力されてしまう場合である。
以前のATOKでは、こういう場合は誤入力となった英字部分を削除して入力し直す必要があったが、ATOK2017からはインプットアシスト、読みへの復帰ということで、標準では[Shift]+[変換]に割り当てられているコマンドがある。
US配列では[変換]キーがなく、標準のキー割当が使えないので、自分は[Shift]+[Ctrl]+[J]に割り当てている。

この機能は、誤入力したアルファベット文字列を正しくAOURなりローマ字入力で入力されたものとして再度読みをかなで入力してくれるものである。
たとえば、ローマ字入力で「sakaura」と入力してしまった場合、この操作をすると「さくら」が入力されている状態にしてくれる。カスタマイズで別方式としたAOURで「;aifoa」でもそのカスタマイズされた定義規則に照らして「さくら」としてくれる。

この機能は、後述する再変換機能の応用と思われ、未だにアプリケーションにより非対応の場合がある。非対応のアプリケーションでこの操作をすると、誤入力の「sakura」が残ったまま「sakuraさくら」になってしまったりする。確定アンドゥや再変換でも同様のことが起こる。

確定アンドゥと再変換

確定をしてしまった後にもう一度変換する機能が確定アンドゥと再変換である。
この二つは似ているため混同されがちだが、機能としては異なる。確定アンドゥは、確定直後に直前の変換箇所を未確定状態に戻し、文節区切りなどを修正したりもう一度変換し直したりするものだ。これは[Ctrl]+[BS]キーに割り当てられている。
もう一つの再変換は、既に変換・確定してしまってある任意の箇所を未確定状態にするもので文字通りの再変換である。この機能には、[Shift]+[変換]のキーが割り当てられているのであるが、US配列の場合は[変換]キーがないので自分は[Shift]+[Ctrl]+[Space]に割り当てて使っている。

特に確定アンドゥはよく使う。この機能が備わっていない時は、誤った確定部分を削除してから再度入力しなければならなかったが、そのような作業をせずにやり直しが出来るのである。確定アンドゥ操作は、繰り返し行うことで更に前の確定作業にも遡ってやり直しが出来て、未確定状態から再度変換が行えるようになるのが便利である。余り知られていない修正機能だと思うのでここは習得しておきたい。

前述の読みへの復帰と同様に、対応していないアプリケーションでは、確定アンドゥや再変換前の入力部分がそのまま残った状態で、その直後に同じテキストが未確定状態で入力されてしまう。「昇降」を「将校」に改めようと思ったら、「昇降しょうこう」になってしまうという事である。

確定前の修正

読みの入力を行って一度でも変換操作をしてしまうと、状態が変換中になる。確定アンドゥや再変換でも同じだが、同時に文節が区切られてそれが変換の単位となるのであるが、変換対象になっている文節のことを注目文節と言い、注目文節の移動はATOKでは[Shift]+[←]、[Shift]+[→]で行える。これがMS-IMEの場合は[←]、[→]という操作である。
注目文節を適宜移動して、それぞれ正しく変換するか、あるいは入力中の修正と同様の要領で修正する。

また、このときの文節区切り自体が適切とは限らないので、これを修正する必要が生じる場合がある。文節区切りはATOKで[←]、[→]という操作であって、よく使うので[Ctrl]+[K]、[Ctrl]+[L]にも割り当てられている。MS-IMEではATOKの注目文節移動と同じで、[Shift]+[←]、[Shift]+[→]となっており、ATOKと逆になっている。
文節を正しく区切り直した後は、再度変換操作をすることになる。

なお、こうしてみると注目文節の移動へのキー割当は、[Shift]+[←]、[Ctrl]+[→]のみではなく、[Shift]+[K]、[Shift]+[L]があっても良いのかも知れない。今後必要性に応じて割り当ててみるかもしれない。

部分確定

変換状態から一気に全て確定するには[Enter]/[Ctrl]+[M]の操作となるが、修正操作を行った後など注目文節のみ順次確定していく方法もあって、それが[↓]/[Ctrl]+[N]である。注目文節より前の未確定部分を確定し、注目文節を次に移動する。
前の文節から順に確定していく時に役に立つので、この操作は比較的よく使う。操作としては[Ctrl]+[N]のほうがホームポジションを崩さずに打鍵できるのでその方を使っている。

まとめ部分

ATOKを使った和文入力に際して、入力操作の基本となる部分については概ね以上であると思うが、これらの操作については、いつでも使えるように習得しておきたい。
ATOKは他にも多くの機能を備えていて、全てを把握するのは難しい。時々ヘルプを見直して、自分の作業にとって効果があると思えるものを取り入れていくべきである。

Windows 8.1以降では、ATOKパレットは標準では表示されなくなって、以前のように右下にツールバーが表示されて邪魔になるということがなくなっている。[Ctrl]+[F12]でATOKプロパティが表示され各種の設定を行えるほか、[Ctrl]+[F10]でATOKメニューが表示されるので、そこからATOKの各種の機能やヘルプ・マニュアルに辿り着いて、よりATOKを活用して高度な和文入力ができるようになると良いと思っている。

2021-06-09 初稿