ATOKのカスタマイズ

ATOKのカスタマイズ

ATOKのカスタマイズは、キー定義、ローマ字定義、表示色の三つである。
これら三つをまとめて「スタイル」と呼んでおり、スタイル単位でカスタマイズ内容を保存したりインポート/エクスポートしたりすることが基本になっている。

スタイル

ATOKのスタイルは、「ATOK」と名のついたスタイルが標準である。標準のキー定義、ローマ字定義、表示色定義が設定されている。ほかにも、他のIMEの互換スタイルなどがいくつか収録されている。このようなシステム初期値の定義は、名称変更や削除もできないほか、上書きもできない。設定内容の変更を行うと、別名でのスタイル保存が求められる。

スタイルは、どのスタイルを使用するか選択するようになっていて、選択したスタイルには赤丸のマークがつく。具体的な操作としては、コンバート、追加(新規作成)、ファイルから追加、ファイルに出力があり、初期値以外のスタイルではこのほかに名称の変更と削除が可能になっている。なお、削除については、選択状態のスタイルは削除できないので、他のスタイルを選択した後でなければならない。

スタイルコンバートは、旧版のスタイルを取り込む際に仕様を合わせるもので、旧版のスタイル形式として出力するようなものではない。従って、標準の機能においては新しいVersionのATOKのスタイルを古いVersionのATOKのスタイルに変換することはできない。
新規作成とファイルから追加は、名のとおりで、ファイルから追加は古いATOKのスタイルファイルの場合先にコンバートをする必要があったかもしれない。追加と一緒にコンバートできたかどうかというところである。
ファイルに出力は、「.STY」の拡張子がついたスタイルファイルとして任意のフォルダに出力できる。スタイルファイルは、単なるShift-JISコードのテキストファイルで、内容構成は次のようになっている。

[環境]
IDCode=ATOKSTYLE32
Version=24.00
Revision=1.00
[カスタマイズ]
キー=0000001c ……
ユーザー定義色=FFFFFFF ……
ローマ字=00000229 ……
表示色=0FFFFFF ……

設定値である16進数の意味はわからない。わかっていればここを書き換えることもできそうだが、設定値を変更するための標準のインターフェースがあるので、今のところはあえて設定値をテキストエディタで書き換えたりするまでのニーズはないのだと思われる。

スタイルの共有

キー定義、ローマ字定義、あるいは配色の定義を、個別に定義ファイルのようなものからインポートすることはできない。これらが一体となったスタイルファイルそのものを取り込んだり、個別に他のスタイルから取り込むことは可能である。
例えばローマ字定義だけを共有したい場合であっても、スタイルファイル全体での取り込みが必要である。

たとえばAOURのローマ字定義537個を定義一覧から自分で一つずつ登録するというのは、これは正直大変な作業である。
スタイルファイルの中身を、当該部分だけ編集するという方法も考えられるが、基本的にはスタイルファイルの編集はATOKのインターフェースでなければならないので、いろいろ難しいことも多い。

キー定義

キー定義のカスタマイズは、ATOKの変換や入力操作、メニュー操作などのキー定義を設定するものである。標準でも様々な割り当てがされているが、これを変更したり、さらに別の定義を追加したりする場合に使用する。
文字未入力、入力中、変換中など場面に分けて定義ができるようになっているので、そのあたりをうまく使い分けられるように考えて定義することが必要である。ただし、これはインターフェースを触ればだいたい動作がつかめるので、さほど難しいことではない。選べない状態についてはグレーアウトされているなど。

割り当てられるキーは、[Shift]と[Ctrl]の組み合わせのみで、[Alt]キーとの組み合わせは定義できない。これらと組み合わせができるのはほとんどすべてのメインキー、[Alt]以外のキーである。

定義の操作としては、既存の他のスタイルからの読み込みと、ファイルへの一覧出力ができるが、逆にキー定義だけインポートすることができないのが難点である。これは後述するローマ字に関しても同様である。
要するに、出力される定義一覧は、設定一覧として内容を確認することができるだけのテキストファイルでしかない。

ローマ字

ローマ字定義のカスタマイズは、どのキーの押下によりどのかなを入力させるかという定義を自由に変更できる機能である。AOURは、このローマ字定義のカスタマイズにより設定して使っている。

ATOKのローマ字定義機能には、いくつかの制限がある。
まずは、定義数の上限が550ということである。これより実際には少ないという情報もあるが、概ね550である。AOURは、現時点で537の定義を行っている。本格的に拡張入力の定義をしようとすると、これでは足りない場合もあって、ルールが多い入力方式などは完全に実装できない制約になる。
MS-IMEは320くらいであるので、それよりは多い。320の定義数ならAOURの実装は難しい。Google日本語入力は、定義数の上限に達したという話はない。

また、これは他のIMEの定義においても同様だと思うが、単独で入力できるキーを割り当てた後は、そのキーから始まる定義の割り当てができない。
これは考えてみれば当然のことなのであるが、例えば[A]に「あ」を割り当てた場合、[A]から始まる[AB][AC]などの綴りを作ることができないということである。最初の[A]を打鍵した時点で「あ」が入力されてしまうので、[AB]に「か」などを割り当てると矛盾が生じてしまうからである。[BA][CA]などは割り当てが可能である。

さらに、ATOKでは句読点のキー[,][.][/]などについてはカスタマイズで定義を割り当てることができない仕様となっている。
そもそもローマ字入力のカスタマイズ機能は、基本的にQWERTYローマ字を補完するものという前提があるので、Dvorakなど他の配列をそのままベースにした入力方式を割り当てるようなことが想定されていないのである。
これに関連し、割り当ての変更に関係なく子音キーを複数回打鍵すると「っw」のように促音が入力されてしまうし、[N]キーの連続打鍵でそういう割り当てをしていなくても「んn」のようになってしまうなど、QWERTYローマ字のルールに依存しているのである。

ローマ字定義に関しても、可能な操作はキー定義と同じであって、一覧出力をすることはできても、その出力された形式でそのまま取り込むことができないのは厄介である。

表示色

入力中の文字色や、変換中の文字色、背景色、注目文節の色などを自由にカスタマイズすることができる。ATOKは標準の配色で、だいたいどんな環境でも見やすいと思うので、あえて自分はこの部分の変更は行っていないが、配色に拘って独自性を出してみるのもいいかもしれない。
方法は、このインターフェースから入れば特に難しいことはない。他のスタイルから読み込むことも可能で、相当昔のPCからの名残だと思うが、モノクロ標準色にもすることができる。

この表示色は、大抵のアプリケーションでその標準が使われるが、ブラウザの入力などはブラウザの配色で使われるし、自分が使っているエディタに関してもIMEの配色をエディタ側で制御できるので、そのように別の配色を使っていたりする。

表示色のカスタマイズ結果も、その部分だけをエクスポートしたりインポートしたりすることはできないようになっている。

2021/06/15